花の香を風のたよりにたぐへてぞ鶯さそふしるべにはやる 紀友則
(梅の)花の香を風の便りに添わせて、鶯を誘い出す案内役としよう。

 

早咲きの梅がぽつぽつと咲き出しています。梅が咲くようになるといよいよ景色も春めいてきますね。ここらでも時期になればどこからともなく鶯の鳴き声が聞こえてきますが、まだちょっと早いかな。春の初めのぐぜりと呼ばれる鳴き声は、その拙さが初々しくて思わず応援したくなります。

音程をハズしまくって鶯は「ホーホケキョ」とは鳴かない鳥だ 朝倉冴希

 

きみならで誰にか見せむ梅の花色をも香をも知る人ぞ知る 紀友則
君以外に誰に見せたらいいのだろうか梅の花を。色も香りも良さがわかるひとにしかわからないのに

 

紀友則は歌人としての評価は高ったものの、官職についたのは40代後半。色も香りもわかる人がわかってくれればいいという、生き方としては春の初めの鶯のように不器用だったのかもしれません。ぐぜりの鳴き声がだんだんと「ホーホケキョ」へと近づくように、後には従兄弟である紀貫之や壬生忠岑らとともに「古今和歌集」の撰者に選ばれるまでに大成しますが、残念ながら完成を待たずして亡くなっています。

 

あすしらぬ我身と思えど暮れぬまのけふは人こそ悲しかりけれ  紀貫之
明日どうなるかわからない我が身だけど、今日は亡くなった人のことがただただ悲しい

時しもあれ秋やは人の別るべきあるを見るだに恋しきものを  壬生忠岑
時ある中で物悲しい秋に人の別れがあっていいのだろうか。普通に会って姿を見るだけでも恋しくなるというのに

 

それにしても風流ですよね。梅の香りを風に乗せて、鶯を誘い出す案内役としようなんて雅な発想はどこからくるのか。