今回は、歌人・鈴掛真さんの「ゲイだけど質問ある?」です。

 

「オープンリーゲイ」である筆者が、自身の体験を踏まえながらLGBTに関する質問に答えていくwebサイトのコラム「ゲイだけど質問ある?」が書籍化されたものです。素敵な短歌も掲載されています。

 

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以前、鈴掛真さんのインタビュー記事を読んだときのことを記事にしました。

 

その時に、セクシャリティーといってもいろいろあるし、人によっても恋愛観は違うんだという認識をもっともっと広げて、セクシャルマイノリティーに対する誤解や偏見をなくしていくための「オープンリーゲイ」だと感じたと書きました。

 

本書を読んでさらに感じたのは、男だからとか女だからとかそういうことに関係なく、人として思うことは何も変わらないんだということです。そして、男女間なら当たり前にできることをただ当たり前にしたい・・・ただそれだけを求めているのだということ。そのことを、具体例をあげながらわかりやすく説明されているので「なるほど」とストンと腑に落ちる感覚がありました。

 

例えば、こんな感じ。

 

女性が多く働く職場に、男性社員が赴任して来たとします。その男性社員が、勤務の初日に、こんな自己紹介をしました。
「僕が男だからって、イヤらしい目で見たり、襲って来たりしないでくださいね!
さて、女性社員たちはどう思うでしょうか。
(は?)
(なに私たちが色目使う前提で話してんの?)
(襲うわけないのに、そんなことわざわざ言う?)
(こっちにだって、好みのタイプがあるわ)
(どの顔言っとんじゃコラッ)
とにかく、いい気分はしないでしょう。女性に対して、何か恐ろしいトラウマがあるのかもしれないけど、だからと言って関係のない女性に対してまで敵対するのはお門違いですよね。
「学校や職場に同性愛者がいたら、襲って来そうで怖い」と言われた時、僕ら同性愛者も、これとまったく同じことを思っています。

 

 

 

賃貸契約を結べない、入院・手術等の手続きができない、相続の権利がない・・・。婚姻制度のない同性カップル生じるこういった問題については、事実婚でもいいじゃんなんていうのは個人の主観でしかなく「男女が当たり前にある結婚する・しないの選択肢がことがない」ことが問題だと書かれています。

 

ハンバーグランチが美味しそう!ライスとパンが選べるのか。パンにしよう。
「すみませーん!ハンバーグランチください」
「ハンバーグランチですね。じゃあ、ライスでいいですね」
「えっ?あの選べるんですよね?ライスとパン」
「いえ、お客様は選べません。ライスです」
「は?他のお客さんは選べるのに僕は選べないの?」
「イヤですか?ハンバーグに合いますよ、ライス」
「知ってるわボケ。何で選べないのか聞いてるんだよ」
「めんどくせぇ客だな。ライスの方がハンバーグに合うんだから良いだろうが」

うん、良いわけないよね。選べるから意味があるんだよね。選択する自由が与えられていないことが問題なんだよね。

 

LGBTに対して理解はできなくても、彼らの生き様を阻むようなことは少しずつでもなくしていくべきだと私も思います。

 

上記にあげたのはほんの一例ですが、何もLGBTだから特別というわけではなく、家庭内や職場での差別的な扱いだったりだとか社会制度だったり・・・何かに対して「モヤモヤした部分」を抱えている人というのは大勢いるんじゃないでしょうか。

 

でも、その「モヤモヤ」を感情論ではなく、鈴掛さんや後にご紹介する「せやろがいおじさん」のように正確かつ論理的にきちんと説明できる人は一体どれだけいるんだろうとよぎったのですが、どうなんでしょうね。案外少ない気がします。

 

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もうひとつ心に刺さったのは、息子さんから同性愛者であることをカミングアウトされた母親に対しての「無理に理解しなくてもいい」という言葉です。

 

趣味や指向の違いを理解できなくてもそれが当たり前であるように、同性愛者のことを理解できなくたってそれは当たり前。無理に理解する必要はなく、適度な距離でただ見守ってあげてくださいということが書かれています。

 

そうなんですよねぇ。LGBTじゃない私がこういう記事をいくら書いたところで、偏見はなくとも根っこの部分で理解できないところは正直確かにあるんです。だから、この言葉にはちょっとハッとさせられました。

 

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最後に、鈴掛さん自身もシェアしていた「せやろがいおじさん」がとってもいいことを言っていたのでシェアしますね。「せやろがいおじさん」の言うことはいつもド正論でホントにスカッとさせられます。