【万葉集】浦島子伝説

古典の話

 

いきなりですが、もうすぐ平成の時代も終わりですね。そして、「令和」という新しい時代がもうすぐ始まろうとしています。・・・というわけで、「令和」の語源に関連している万葉集を、このblogでも特集してみようかなと思います。

 

記念すべき第一回目は、万葉集に掲載されている浦島子うらのしまこ伝説」について。

 

Wikipediaより

 

・・・浦島太郎じゃなくて?と思う方もるかもしれませんが、浦島子です。でも、一般的によく知られている浦島太郎物語の原型ともいえる物語なので内容はとても似ています。

 

浦島子伝説のあらすじ

浦島太郎はいじめられた亀を助けたのがきっかけで竜宮城へ向うけど、浦島子は釣りをしながら調子に乗って7日間も家に帰らずに沖へと進んでいったところ海神(わたつみ)の神の娘に遭遇。そこで意気投合した2人は結ばれて、常世の国で暮らすことになります。

 

残された家族に事情を話しておきたいという浦島子に渡されたのが玉手箱で、その玉手箱を開けてしまうという展開は浦島太郎と同じ。玉手箱を開けてしまった浦島子は、急速に老け込みやがて亡くなってしまうのです。

 

万葉集には、そんな言い伝えがあることが思い出されるという長歌とそれに対する返歌が掲載されています。

 

常世辺に 住むべきものを 剣太刀 汝が心から おそやこの君 (高橋虫麻呂)
言い常世の国に住んでいるべきだったのに、汝の思いで愚かなことをしてしまったものよ。

 

常世の国にずっと住んでいればこんなことにならなかったのに愚かなことを・・・と嘆くこの一首は、春の日の 霞める時に 墨吉の 岸に出で居て 釣船の とをらふ見れば 古のことそ思ゆる  (春の日の霞んでいるときに墨吉の岸に出て釣船が揺れるのを見ると古の言い伝えが思い出される)からなる長歌への返歌として詠まれました。

 

※同じ浦島子伝説でも「丹後国風土記」によれぱ、浦島子が丹後国の沖合で釣りをしていると五色の亀が釣れて、その亀が絶世の美女(亀姫)に変身した・・・という内容で、万葉集とはまた微妙に違ってきます。

 

***

 

ところで「丹後国風土記」に書かれてある浦島子と亀姫、そして「御伽草子」に書かれてある浦島太郎と乙姫なんですけど、実は互いに和歌のやりとりをしているんです。面白いことに、これもそれぞれ内容が違います。

【丹後国風土記】浦島子と亀姫が交わした和歌

常世べに 雲たちわたる 水の江の 浦嶋の子が 言持ちわたる
常世へと立ち渡る雲は 浦島子の言伝を携えながら渡っているのです。

大和辺に 風吹き上げて 雲放れ 退き居りともよ 吾を忘らすな
大和のあたりから風が吹いて雲が分かれるがごとく離れていっても、どうか私を忘れないでください。

子らに恋ひ 朝戸を開き 吾が居れば 常世の浜の 波の音聞こゆ
あの人のことが恋しくて朝戸を開けば、常世の浜で聞いた波の音が聞こえてきます

 

次の二首は、後世の人が付けくわえて詠まれたものです。

水の江の 浦嶋の子が 玉くしげ 開けずありせば またも会はましを
浦嶋子が玉手箱を開けずにいたら再び会えたたものを・・・。

常世べに 雲立ちわたる たゆまくも はつかまと 我ぞ悲しき
常世へと雲が立ち渡ること絶え間なく、あるのだろうかないのだろうかと悲しくなってしまう。

 

【御伽草子】浦島太郎と乙姫が交わした和歌

日数経て 重ねし夜半の旅衣(よわのたびごろも) たち別れつつ いつかきて見ん
何度も肌を重ねている別れなければならないのですね。でもいつか会えますよね。

別れ行く 上の空なる唐衣(からころも) 契り深くは またもきて見ん
別れる辛さで上の空になるほどですが、深く契りを交わしたのだからまた会えるでしょう。

かりそめに 契りし人のおもかげを 忘れもやらぬ 身をいかがせん
かりそめに契りを交わした人のおもかげが忘れられず、この身いかがしたら良いのだろう。

 

御伽草子のほうが、なんだか色っぽいですね。( *´艸`) こういう和歌のやりとりができるのは、昔の人ってやっぱり風流だなぁと思います。

 

***

 

さて、そんなわけで今回は、万葉集にある「浦島子うらのしまこ伝説」を取り上げてみましたがいかがでしたでしょうか。また機会があれば、こういう特集をやってみたいなと思います。

 

 

 

余談ですが・・・。

 

小学生のころ、学芸会で「浦島太郎」の劇をやったことがあります。竜宮城にいた浦島太郎が、玉手箱を手に故郷へと戻ってきた場面に登場する村人の役でした。

 

正確なセリフは忘れてしまったけど「それはもう300年も前のことだよ」みたいなことを言っていて、そのたった一言を言うためにすごく緊張したのを覚えています。

 

万葉集にある浦島太郎にとってもよく似た「浦島子伝説」の存在を知ったとき、あのとき緊張感や一体どれだけ素晴らしい所なんだと竜宮城とやらに妄想をふくらませていた当時の自分を思い出しました。

 

では、また~。

 

 

 

 

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