七夕の今日、いかがお過ごしですか?天の川は見られそうもありませんが、万葉集特集の七夕篇です。

 

「七夕」とはもともと、年に一度しか逢うことを許されない織女星(ベガ)と牽牛星(アルタイル)の物語が中国から伝来したものが元になっていて、それが彦星と織姫という形で今の日本に語り継がれています。

 

万葉集には柿本人麻呂、山上憶良といった有名どころをはじめとした多くの歌人によって、実にたくさんの織女(織姫)と牽牛(彦星)の物語を題材にした和歌が詠まれています。その数はというと百三十首以上とも。

 

今のようにたやすく連絡が取れたり、顔を合わせられる時代ではないから、余計に響くものがあったのかもしれませんね。

 

 

大空ゆ通ふ我れすら汝がゆゑに天の川道をなづみてぞ来し 柿本朝臣人麻呂
大空を通っている私ですら、あなたのために天の川を渡ってきたのですよ。

我が背子にうら恋ひ居れば天の川夜舟漕ぐなる楫の音聞こゆ 柿本朝臣人麻呂
愛しいあの人を恋しく思っていたら、天の川を漕ぐ舟の楫の音が聞こえてきました。

 

恋ひしくは日長きものを今だにもともしむべしや逢ふべき夜だに 柿本朝臣人麻呂
恋しく思う日を長く過ごしてきた私をいまだにじらすつもりなのですか、せっかく逢える夜だというのに。

天の川去年の渡りで移ろへば川瀬を踏むに夜ぞ更けにける 柿本朝臣人麻呂
天の川を渡ろうにも去年と様子が変わってしまい、川瀬を踏んでいるうちに夜が明けてしまったのです。

 

どちらかというと万葉集には、このように織女(織姫)と牽牛(彦星)に自分をシンクロさせてなりきる「なりきり型」の歌が多いように思います。それも織女(織姫)または牽牛(彦星)の立場にたって詠むというより、織女(織姫)・牽牛(彦星)そのものになりきっているように私には感じられるのです。

 

・・・なんて蓋を開けてみれば、↑のように柿本朝臣人麻呂が織女(織姫)だったり牽牛(彦星)だったりするわけなんですけどね。(^^;)

 

 

七夕を題材した収録歌の中には、いかにも万葉人らしく↓のような奔放な和歌もあったりします。(笑)

 

ま日長く恋ふる心ゆ秋風に妹が音聞こゆ紐解き行かな 作者不詳
何日も恋焦がれているこの心に、秋風と共に愛しい人の気配が聞こえてくる。衣の紐を解いて会いに行こうか。

天の川川門(かわと)に立ちて我が恋ひし君来ますなり紐解き待たむ 作者不詳
天の川の渡し場に立ちながら恋いつづけてきたあの方がいらっしゃる。衣の紐を解いてお待ちしましょう。

 

ヤる気に満ち溢れていて逆にすがすがしいかも。(^^;)

 

今の時代だと性愛といえばどちらかというとじめっとして生々しさがあるんだけど、この時代は本能のまま悦びを素直に詠っている気がします。

 

 

なんか雨まで降って来てしまったけど、牽牛(彦星)と織女(織姫)の2人が無事に逢えているといいなぁ。