「半年たったんか」感想まとめ、水無月篇です。これでラスト~!!  総勢210名、なんとか全員分書き終えることができました。読解力のないせいで、全く見当違いの不本意なことを書いてしまっていたらごめんなさいですが、読んで感じたことを素直な気持ちで書いたつもりです。

 

読み返しながら文字を起こしてみると、こういうやり方もあるのか・・・これは自分にはなかった発想で面白いなとか、そのときまで気づけなかった新たな発見があったりして非常に勉強になりました。このような機会を与えていただけたこと感謝します。

 

そしてコメントを残してくれたり、いいね!ボタンを押してくれたり、リツイートしていただいた方、改めてありがとうございました。

 

水無月

 

誰だっけ、カモメのピアスくれたやつ そのあと大麻で捕まったやつ 真壁カナ

大麻というのは、かなり物騒な言葉ですね。ていうか、カモメのピアスをくれて、そのあと大麻で捕まっちゃったんでしょう? かなりインパクトのある人物だと思うんだけど、そういうことがあったと印象に残っても名前となると誰だっけ?になるんでしょうか。それともわざとなのかな。・・・なんて、字面通りに考えてみるのもそれはそれで短歌の楽しみ方のひとつ。大麻を詠んだ短歌ってどれくらいあるんだろう。

 

寄り添いて愚痴を言うのも悪くないホットココアのおかわりいかが 霧島絢

話を聞いたり聞いてもらったりしながら、上手に感情をコントロールすることも時には必要で、吐き出さないと辛い場合もありますよね。わかります。ホットココアがなんかあったかくて優しいなぁ。・・・でね。いつも思うことなんだけど、こういう場面って「余計なアドバイスはいらない」とか相談者(というのが適切かわからないけど) 側への配慮を求める声が多いけど、同じぐらい話を聞く方側に対しても気遣いは必要じゃないかなって。もしかしたら、相手も同じくらい・・・いや、それ以上に心の傷を負っているのかもしれないのだから。

 

タグ切ってください今すぐこの帽子で会いにゆきたい春があるので 夏山栞

俵万智さんの言葉を借りれば、「畏れを知らぬ春のヴィーナス 」といったところでしょうか。まさに恋する乙女、“春”を謳歌しているという感じ。帽子の色も軽やかな春色なんだろうな。

 

濡れたまま雷鳴を聞く バス停の屋根はわずかにわたしを守る 架森のん

バス停の屋根ぐらいでは追いつかないぐらいの大雨だろうし、しかも雷まで鳴っている状況とあっては「バスの屋根」はありがたい存在ですね。どしゃ降りの中、雷が鳴っている・・・みたいな描写じゃなくて、「濡れたまま雷鳴を聞く」というのがいいですね。

 

九時間の時差を挟んだ国にいるあなたは今も昨日の途中 キール

「今も昨日の途中」ということは、日本時間でいえば少なくともAM9時前の早朝ということですよね。九時間の時差いうと、場所はイギリスあたりのヨーロッパかな?今の時間はまだ寝ているなとか、もうそろそろ起きる頃かなとか。時差があるとそんなことをついつい考えちゃいますよね。

 

はつなつのけものの重みみだれ咲く百合の花束抱いて歩けば 愁愁

普通に花屋さんで買ったものかもしれないし、「お祝い」や「お別れ」のシーンで受け取ったものなのかもしれない・・・。どのような背景があっての花束なのだろう。それによって「重み」も変わってくるような気もします。確かに幹が太くてしっかりした百合は、意外なほどずっしりと重いから「けもの」というのも頷けます。

 

この町に雑穀米を取り入れたランチは少し新し過ぎた 他人が見た夢の話

いくらお洒落でおいしくても、土地柄や年齢層など条件に合わなければ受け入れられない・・・。どんな店構えにしてどんなメニューを取り入れるのか。そういった意味では、服装を選ぶことに似ているのかもしれません。

 

したくても退位できない俺たちの平成三十一年五月 みやや

何から退位したいということなのだろう。平成三十一年五月という具体的な日付を持ってきたところがいいなと思いました。

 

はじめての右クリックに母のまだ知らなきことのあることを知る 谷口奏星

「はじめての右クリック」で、パソコンをまともに触ったこともないくらい初期の段階だということがわかりますね。ガラケーだった母が、去年にやっとスマホを持ち始めたんですけど、操作に慣れるまであれこれ訊いてきたのを思い出しました。

 

何もかも知らないどうしだからいい 奇跡はいつもゼロからはじまる 鋏星人

何もかも知らないのその人のことを、もっと知りたいと思えるかどうか・・・奇跡はそこからはじまりますね。お互いに。知ってもらうためにどこまでさらけ出せるかというのもありますね。

 

這い出したこころ元へは収まらず風に絡ませながら歩いた しらくま

人間だからいろんな感情が沸き上がるけど、人前で平静を保てるように、時には風船みたいに風に飛ばして昇華させながら日常をこなしていくんですよね。「風に絡ませながら」とはそういうことなのかなと思いました。

 

目覚ましの時計が鳴ってこの町は人の温度をひとつ失う 鴨衣

昔いろいろと精神的に追い詰められていたとき、「ああ、朝が来てしまった・・・」と、手足が冷えていような何とも言えない感覚になるのが怖くて怖くて仕方ありませんでした。「温度をひとつ失う」というのは、そんな風に心を震せながら朝を迎えている誰かへ思いを馳せているのでしょう。そんな風に解釈しました。アラームの音がけたたましいと、いきなりの現実感に引きずり込まれそうな気がして、必ず好きな音楽で目覚めるようにしています。

 

私でない誰かの情景描写だろうこの町が今日快晴なのは 鮎

 精神状態と天気があまりにかけ離れているときってありますね。そんな時、その天気がなんとなく嘘っぽく感じてしまうものだけど、それが他の誰かの情景描写だと言われたらそうかもしれないと納得してしまうかも・・・。

 

別々に少し歩いただけでもう月がみう亡くなるビルの街 とみた律

空が狭いビル街ならではですね。ビル街だから仕事帰りなのかな。自然の山や木々との取り合わせもいいけど、立ち並ぶ高層ビルに浮かぶ月というのもなかなか絵になっていいですよね。

 

美しい言葉をいくつ並べても伝えたいのは好きの一言 かぼちゃ王子

相聞歌やラブソングの言いたいことは、大概それですもんね。どれくらい好きでどのように好きなのか・・・。その「好き」をどう伝えるのかの工夫を凝らすだけで。伝えたいことはごくシンプルだけど、なんだかんだでまどろっこしいのが恋愛で、それが醍醐味なのかもしれません。あと、相手の立場とかを考えて「言うべきか」「言わざるべきか」それが問題だ・・・という場合もあるしね。

 

幸せが歩いてこいよ。定期便九時五時とかでよろしく頼む。 藍笹キミコ

請求書なんかは否応なしにやってくるけど、還付となるとこっちから申請しないとなんの音沙汰もなしとか。積極的に来てほしいものほど、自分で動かないとやってこないものですね。「歩いてこいよ」って言いたいところだけど。

 

黒ばかり選んでしまう僕だけが半音高い横断歩道 尾渡はち

横断歩道をピアノに見立てて、「半音高い」としているのが面白いです。あまり意味はないんだけど、道を歩くときにこの線を辿っていこうとか、この色の部分を踏まないようにしようとか勝手にルールを決めるのってよくやりがちですよね。一種の遊びなんだけど、私なんかはいまだにやったりします。たま~にね。

 

にんげんを営んでいるメモ帳に足は片方ずつ出すとある 深水きいろ

「ムカデのダンス」という童話を思い出しました。ダンスが得意だったムカデが、どうやって足を動かして踊るのかを尋ねられたとたんに踊れなくなってしまったという話。ムカデは本能的にただ踊っていただけだから、理屈で足がどうとか考えはじめたとたんに動けなくなっちゃったんですよね。ムカデが本能で踊っていたように、ただただ足を動かして歩いていて・・・。人間を営んでいるうえで、ただただ本能的にやっていることは他にもいっぱいありそう。