すべての人間は“善”として生まれ、“悪”は後天的なものであるというのが孟子の性善説。人間は未熟で弱い生き物というのが根底にあり、だからこそ“悪”に走らぬよう正す努力を怠ってはならないという性悪説を唱えたのか荀子。

 

性悪説を唱えた荀子の言葉に「蓬生麻中不扶而自直  白沙在涅與之俱黑」というのがあります。

ほう(よもぎ)も麻中まちゅうに生ずれば たすけずしてなおし  白きすなどろの中にればこれともくろなり

(茎の曲がった)蓬も(ピンと伸びた)麻の中に育てば助けを借りずともまっすぐに育つ、白い砂も泥の中にあれば泥にまみれて黒くなってしまうという意味であり、人は環境によって良くも悪くも変わることを説いています。

 

世の中に麻は跡なくなりにけり心のままの蓬のみして 北条泰時

つまりこの歌は、荀子の言葉に基づき、麻のようなまっすぐな人はいなくなり心まかせに生える蓬のような連中ばかりだと嘆いているそんな歌となります。

 

北条泰時といえば、NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の主人公・北条義時の長男。その泰時が、武家政権を対象とした法令「御成敗式目」を制定したのが今から790年前。1232年8月27日(貞永元年8月10日)のことです。

 

時を経て令和となり、環境が人に与える影響の大きさを国家の要人を銃撃するというテロ行為によって知らしめた衝撃的な事件がありました。銃殺された安倍元総理の国葬がちょうど一か月後に行われようとしています。人間の本性は“善”なのか“悪”なのか。その答えはわかりませんが、できることなら“泥”ではなく“”の中に身を置きたいものですね。