「わたくし、生まれも育ちも東京葛飾柴又・・・」寅さんの口上みたいな一首だけど、なんじゃもんじゃの股からなんてなかなか出てこない発想。なんじゃもんじゃといえばヒトツバタゴを指すことが多いですが、その語源は「この木はなんじゃ」からきており、何者でもないですよという捉えどころのない返答に「なんじゃもんじゃの股」というのは頓智が効いてぴったり。

 

甲州鶯宿峠というのは本人ではなく、母親の出身地。何よりヒトツバタゴの花言葉は「清廉」なのだから、「甲州鶯宿峠に立っているなんじゃもんじゃ」はあながち間違ってはいないんじゃないか、というよりこれ以上の返しはないんじゃないかと納得してしまいそうになります。

 

ふるさとの右左口邨(むら)は骨壷の底にゆられてわがかえる村 山崎方代
※右左口邨・・・山梨県東千代郡右左口村

母の名は山崎けさのと申します日の暮方の今日の思いよ 山崎方代

 

 

なんとなくストレートに答えづらい質問されるときってあるじゃないですか。別にやましいわけでも何でもないんだけど、どこまで答えていいんだろうって考えちゃうときとか。そんなときにふわふわと咲くヒトツバタゴのように微笑みながら、空気を乱すことなくさらっと気の利いたことことが言える人っているけどすごく憧れます。シドロモドロになりがちな私からすると、「甲州鶯宿峠に立っているなんじゃもんじゃの股からですよ」ってなかなか言えるもんじゃないって思うのです。