当たり前のように減塩、減塩と言われている中、「塩が足りない」いうタイトルでまず「えっ?」と疑う方が多いかと思います。

 

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著者の村上譲顕氏は、学生時代に貧血、低血圧など様々な体調不良に悩まされていたそうです。マクロビオティックとの出会いによって、それらの体調不良がカリウム等の多量摂取によって引き起こされた塩分不足によるものだと知り、塩の大切さに気づかされたということでした。

 

細胞の水分バランスは、カリウムとナトリウムの相互作用になってバランスが保たれていますが、そのバランスが崩れることがよくないんですね。

 

大事なのはここでいう「塩」というのは、過剰に精製された塩ではなくミネラルを豊富に含んだ天然塩であるということです。

 

理由は、精製された塩はミネラルを排除してしまうので、ナトリウムの過剰摂取につながりやすいからです。ナトリウムの過剰摂取は高血圧の原因になりますが、ミネラルとナトリウムが絶妙のバランスで含まれている天然塩であれば高血圧の原因とはならないとの見解でした。そういった意味でも、天然塩が推奨されています。

 

本書では「おいしく感じる」のが、その人にとっての適切な量だと書かれています。天然塩の場合は、その人にとって摂取し過ぎると、ミネラル成分によって味にエグみを感じて美味しく感じられなくなるのだそうです。

 

自分が塩分不足かどうかを判断するには、こちらのサイトを参考にチェックしてみるのもいいかもしれません。水100mlに塩小さじ1/2杯を溶かした0.5%の食塩水を飲んでどう感じるかというものです。

 

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昔ながらの製法で作られた塩には、海水をまるごと凝縮して作られていたため主成分の塩化ナトリウムのほかに「にがり」と呼ばれるミネラルが豊富に含まれており、それこそが本来の塩の形でした。

 

ミネラルなら他で補えばいいじゃないと思われるかもしれませんが、昔ながらの塩は現在の技術ではまだ分析できていない、または科学的に必要性が証明されていない成分もあり、それらがチームとして作用することで効果が発揮されるので、やはり天然塩が好ましいのです。

 

しかし、さまざまな理由により、昔ながらの塩田による製法は「イオン交換膜法」という製法にきりかえられてしまったことによって、一時廃止されてしまいます。

 

著者の村上譲顕氏は、本来の伝統的な塩の復活に尽力された1人であり、現在は「NPO法人日本食用塩研究会」、そして 「海の精株式会社」の代表を務められています。

 

本書では、塩の製造方法や具体的にどういった塩がいいのかなども詳しく書かれています。一言で言うならば、海の成分に近ければ近いほど体にはいい塩ということですね。「海の精株式会社」のHPでは、天然塩の販売もされていますので、気になる方はのぞいてみてください。

 

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一応栄養士の免許を持っていますが、塩分は高血圧等のリスクがあることから1日10g以下に抑えたほうがいいと学校で習いました。※現在の基準では7~8gとかもっと少なくなっているはずです。

 

なので、濃い目の味付けが好きな父親が、醤油をジャバジャバかけているのをみると「もう少し控えたほうがいいんじゃない?」と事あるごとに言っていましたし、その父親が脳梗塞で救急車で病院に運ばれてからは尚更でした。※幸い後遺症もなく元気に過ごしています。

 

また、自分自身も心臓の手術を受けてからは、なるべく減塩を心がけるようにと言われていますし、塩分を摂取することに対してどこか後ろめたさを感じているところがありました。何より「日本人は塩分を過剰に摂取しすぎている」という俗説を、これまで疑うことなく過ごしてきました。

 

気を付けなければならないのはナトリウムの過剰摂取であり、「塩分=控えるべきもの」という思い込みを捨てて、不調の原因が塩分不足によるものかもしれないと疑ってみることも必要なのだと気づかされました。

 

これから暑くなるにつれて、熱中症予防のためにも塩分は必要になってきます。参考にしていただければ幸いです。