「戦争と平和」や「イワンのバカ」といった有名作品を生み出した、ロシア作家の巨匠・レフ・トルストイの名作。何度も映画化されている作品だけど、今回観たのはキーラ・ナイトレイ主演のイギリス・フランス・アメリカ合作のもの。

 

なんといっても特徴的なのが、場面転換のときに映像が舞台劇化する演出。ウッチャン主演の「僕の妻と結婚してください」というドラマでも似たような演出があって、変わった演出だなと思ったのだけど、もしかしたらこの映画をモチーフにしたのかもしれない。あと、アカデミー賞の衣装デザイン賞を受賞しているだけあって、豪華な衣装も見どころ。

 

 

アンナは政府高官カレーニンの妻。険悪になってしまった兄夫婦の仲裁のためにペテルブルクからモスクアにやってきたアンナ。そこで兄嫁の妹キティに誘われて舞踏会へ赴いたアンナは、キティの恋人であるヴロンスキーと出会い、互いに惹かれ合っていく。それでも一旦は、夫と子供の待つペテルブルクへと戻ったアンナだったが、その彼女に残された理性の箍がだんだんと外れていく。

 

極寒の地を走り抜けているだけあって雪と氷に塗れた蒸気機関車が劇中に何度か登場し、それが何とも言えず威風堂々していたのだけど、欲望の赴くままに突っ走るアンナは、レールを外れた暴走機関車そのものだった。

 

アンナの兄であるオプロンスキーの友人・リョービンは、キティに恋心を抱いている地方の地主。アンナとカレーニンの夫婦関係、そしてヴロンスキーとの仲と対比するように、リョービンとキティの関係が描かれているところがこの作品の面白いところであり、破綻へと向かうアンナの暴走ぶりをより際立たせている。

 

「だから古典は面白い」という本に書かれてあったのだけど、著者の野口悠紀雄氏はルノワールの「イレーヌカーンダンブェール嬢の肖像」を見つけたときに、これこそキティだと心に決めたそうだ。映画に出てくるキティはどんな感じかなと思っていたんだけど、イレーヌカーンダンブェール嬢の雰囲気よりは少し快活なイメージ。

 

 

※この記事について

ウクライナやロシア関連の芸術文化に触れてみることで、両国のことをより深く知っていけたらという趣旨で書いています。 ウクライナまたはロシアのどちらかを肩入れするものではないし、国際情勢に対する個人的な見解を示すものでもないことをご理解ください。