今回は、「冴希流短歌の作り方」と題して、短歌の詠み方について少し語ってみようかと思います。

伝えたいことを明確にする

文語や口語、定型に破調、様々なやり方はありますが、どのような短歌を詠むにしろ最も肝心だと思うのは「伝えたいことを明確にする」ということです。 会えない寂しさ、届かない想いへの切なさ・・・憤り・・・etc そこの輪郭をはっきりさせることです。

 

例えば、日常のとある場面において何かを感じ取ってそれを歌にしたいのなら、そこから感じ取ったものは何か・・・、何を読み手に何を感じ取ってもらいたいのか・・・を、まずは明確にさせます。なぜなら、その部分がぼやけたままでは、どんなに推敲を重ねたとしてもただ言葉を連ねただけの中途半端なものになってしまうからです。

 

但し、その肝となる部分をそのまま伝えてしまってはそれ以上の広がりがなくなってしまいます。詠み手に何を伝えたいのかをクリアにしたうえで、それを直接的に伝えず最も効果的な言葉を用いてそのことを感じ取ってもらえるよう誘導するのです

 

サバンナの象のうんこよ聞いてくれだるいせつないこわいさみしい  穂村弘

 

穂村氏の著書「シンジケート」にあるこの歌のように、敢えて形容詞を用いた成功例もありますがかなり高度なテクニックです。

 

 

 

「平面の君は動かず頬だとか唇だとか立体がいい」

朝倉冴希のこの歌を例にあげてみますね。この作品のクリアにすべき伝えたい、感じ取ってもらいたいことは「写真や画像ではなく実物に会いたい、触れたい」という気持ちです。まずはここを部分を明確にして、言葉選びや表現方法はそれに基づいて決めていきます。

 

一番伝えたい「会いたい、触れたい」というワードは使わずに、「会いたい、触れたい」という想いをどのようにして伝えるか。そうして導き出したのか「立体がいい」という言葉です。

 

 

大切なことなのでもう一度言います。

短歌を詠むときは、言葉を導き出す前にまず伝えたいことを明確にするのが先決。但し、一番伝えたいことは直接的には伝えない。

 

テクニックどうこうよりも、まずはそのことを意識するというのが冴希流です。

では、また~。