いろいろあるけど、前に進もうと思う。
五十歳を目前に控えた進は、役者という職業を細々と続けながら、東京で暮らしている。最近ようやく順調に仕事が入るようになったが、娘と妻のいる家庭内では、どうにも居心地の悪さを感じるようになった。
ときどき、ふと漠然とした不安を感じることがある。これから自分たちはどうなっていくのか……。
故郷で一緒に育った姉、友人。老いていく父と母、そして今の家族、妻と娘。
進の人生に関わる様々な人がいる。そして、それぞれがひとりひとりの人生を生きている。でも、どこかで重なり、繋がり、そしてお互いの人生に何かのきっかけを与え続けていく――。
“人生は、長いようであっという間”
翻弄され、迷いながらも家族や人生と向き合い、懸命に生きる人々を描いた群像小説。

 

これはねぇ、もうなんていうか・・・なんていうんだろうね。「ウッチャ~ン!!(泣)」と思わず叫びたくなる・・・そんな小説でした。

 

前評判で「泣かされる」とあったからどんな感じかなと思って読み始めて、途中までは物語のテイストとして泣ける小説という感じではないかなと感じていたんです。それがいつの間にやら・・・気づいたらティッシュ片手に大号泣ですよ。本を読んでここまで号泣したのなんて初めてかもしれない。

 

別にね、狙って泣かせにかかっているわけでもなく、こっちも泣こうとしているわけではないんですよ。だけど、なんかウッチャンって、絶妙に涙腺のツボを刺激してくるときがあってね。イッテQだと大車輪の時とか。「ウッチャ~ン!!(泣)」ってスイッチが入ってしまうとね、もうダメなんです。(^^;)

 

金メダル男を読んだときに、文面から滲み出るものにウッチャンらしさを感じで「ああ、ウッチャンの文章だなぁ」としみじみ思ったんです。今回は、文体も構成もテイストも違うのに、やっぱり「ああ、ウッチャンの文章だぁ」と思って・・・。本人のコメントに「噛み締めながら書きました」とあるんですけど、丁寧に丁寧に書いたんだろうなとその想いがすごく伝わってくるそんな本でした。

 

ネタバレになるからあんまり書けないんだけど、やっぱりセリフがいいんですよ。実感がこもっていて想いが伝わるというか、親がわが子に掛ける言葉ひとつひとつの情の深さだったりだとか・・・そんなところにものすごく涙腺を刺激させられました。時折出てくる九州弁がこれまたすごく良くてね・・・。さすがは九州男児。(笑)

 

それとね、ウッチャンらしく、自身のルーツだとか経験がふんだんに盛り込まれています。ピアノだったり社交ダンスだったり・・・本業であるお笑いとは違うジャンルのいろんなことにチャレンジしていて、そういうのもちゃんと糧にして作品へと落とし込んでいるところが凄いなぁと毎回思います。

 

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だんだんと歳を取っていくということに対して考えることが増えてきました。人生の下り坂に差し掛かればあとは終焉に向かって衰えていくばかり・・・なんて考えると何とも切なくなるし、進と同じように漠然とした不安がよぎります。でも結局は、他人事ではなく自分事としてちゃんと受け止めながら、できることをやって日々を重ねていくしかないんですよね。

 

一瞬、一瞬、大切に生きていかなきゃいけないですね。