湊かなえさんの作品。湊かなえさんといえば、榮倉奈々ちゃん主演のドラマ「Nのために」が好きで観ていました。榮倉奈々ちゃんは、このドラマで共演した賀来賢人さんと結婚されましたよね。

 

 

さて本書は、登場人物の手紙のやりとりのみで構成されており、その手紙から登場人物のバックグラウンドが明かされ、真相が浮かび上がってくるという仕掛けです。

 

「十年後の卒業文集」「二〇年目の宿題」「一五年目の補習」という短編が収録されており、「十年後の卒業文集」は友人同士、「二〇年目の宿題」は教師と教え子、「一五年目の補習」は恋人同士のやりとりとなっています。

 

電話やメールなどいくらでも連絡手段があるのに、なぜ敢えて手紙でなければならないのか。そういったところから登場人物の設定などなど、書簡という“しばり”がある中で読者をどう導いていくのかが作者の腕の見せ所。

 

なるべく自然な形でやらなければ、手紙という名の別物になってしまう為こういった形式はかなりのテクニックを要するんだろうなと素人ながらも察しはつきます。

 

 

さすがだなと思ったのは、表面上おだやかそうな文面のちょっとしたの言い回しでの腹の探り合いや、(内心イラっときてる?)といったような深層心理など絶妙に表現されているところ。互いの心理戦は時にスリリングであり、湊かなえさんはそのあたりがやっぱり上手です。気が付けば、湊かなえワールドにどっぷりはまっている自分がいました。

 

個人的には「二〇年目の宿題」と「一五年目の補習」のふたつが好きです。湊かなえさんらしいミステリー要素も含まれていますよ。

 

***

 

手紙といえばいろいろな思い出があります。昔好きだった人に思い切って書いたラブレターの恥ずかしすぎる失敗や、ずっと前の職場を退職ときにいただいたチーフからの手紙に励まされたこと、海外にホームステイした友人とのやりとり・・・などなど。

 

手紙にまつわるエトセトラが思い出されて、懐かしいなぁと思ってつい読み返してみたりなんかしてね。大切な人に手紙を書いていたあの頃の自分。なんか純粋だったなぁ。

 

 

吉永小百合さん主演の「北のカナリアたち」という映画は「二〇年目の宿題」が原案となっており、「一五年目の補習」は松下奈緒さん主演でドラマ化されています。