「Always三丁目の夕日」出てくるあのノスタルジー。「クレヨンしんちゃん モーレツオトナ帝国の逆襲」に出てくる敵役・イエスタディ・ワンスモアが理想とする昭和感万歳のレトロな世界観。「しのびよる闇」とは、夕闇と大人になって背負わされる重圧や責任感の比喩をかけているのだろうと解釈しました。

 

しのびよる闇に背を向けかき混ぜたメンコの極彩色こそ未来 笹公人
ベーゴマのたたかう音が消えるとき隣町からゆうやみがくる 同上
夕ぐれの商店街ですれちがうメトロン星人ふりむくなかれ 同上

 

題名からして「Always三丁目の夕日」はいわずもなが。輝かしき20世紀を取り戻そうとするイエスタディ・ワンスモアが、20世紀博の建物内に造った理想郷は常に夕暮れ時の設定。メンコ、ベーゴマ、商店街。昭和生まれとはいえその時代にどっぷりつかっていたわけではないけど、やはりそういったものに夕日が似合うと思ってしまいます。どうしてなんでしょうね。

 

ずっとこのままでいたいと思っても永遠にいられなくて、どんなに懐かしくてももう戻れないあの頃。今生きているこの時代が懐かしいと思う時がきて、それは黄昏時のように一瞬で美しかったことを知るけど、そのときは本当の意味で気づいてはいないし、気づけなくて。だから懐かしさは琴線に触れるのかもしれません。

 

旅行へ行けばその土地らしさを求めるのと同じで、その時代らしさやノスタルジーをふいに求めて浸りたくなるのはいつの時代も同じ。「Always三丁目の夕日」「クレヨンしんちゃん モーレツオトナ帝国の逆襲」と同じく、そんなときはここへおいでと言ってくれるのが掲出歌が掲載されている「抒情の奇妙な冒険」なのだと感じています。

 

昭和の日の今日ぐらいは、レトロに染まって思いっきりノスタルジーに浸るのも悪くないかもしれません。時は止まってくれないから、ノスタルジーはノスタルジーとしてそうしている間にも今を生きて、未来へと歩みを進めていけることの幸せ。