ロシア作家、アントン・チェーホフの戯曲。「田園生活の情景」「かもめ」「三人姉妹」「桜の園」の4幕からなる。アカデミー賞国際長編映画賞を受賞した映画「ドライブマイカー」のモチーフとなっていることでも話題になった。

 

【登場人物】

・アレクサンドル・ウラジーミロヴィチ・セレブリャコーフ
年老いた大学教授。退職後に田舎の領地に移住してきたが、慣れない田舎暮らしとリューマチや痛風に悩まされる日々を過ごしている。
・エレーナ・アンドレーエヴナ・セレブリャコーヴァ
教授の若く美しい後妻。
・ソフィヤ・アレクサンドロヴナ・セレブリャコーヴァ
ソーニャ。教授と亡くなった先妻ヴェーラとの間の娘。伯父のワーニャとともに領地の経営にいそしんでいる。この領地は母が嫁入りの際に祖父から買い与えられたもので、現在は正確にはソーニャのものである。
・マリヤ・ヴァシーリエヴナ・ヴォイニーツカヤ
ワーニャとヴェーラの母。
・イヴァン・ペトローヴィチ・ヴォイニーツキー
ワーニャ。マリヤの息子、ヴェーラの兄。教授の学識を崇拝し、領地の経営のために身を粉にして働いてきたが、今や教授への信頼を失い、自分はだまされてきたという思いにとりつかれている。
・ミハイル・リヴォーヴィチ・アーストロフ
医師。
・イリヤ・イリイチ・テレーギン
落ちぶれた地主。
・マリーナ
年寄りの乳母。
・下男

 

 

ワ―ニャは、姪っ子のソーニャと共に田舎の領地を管理している。そこへ大学教授であり亡き妹の元夫であるセレブリャコーフが、再婚相手のエレーナを連れてワ―ニャの元にやってきたことから物語ははじまる。

 

セレブリャコーフがやってきたからというもの、生活スタイルが全く違う故にすっかりペースを乱されてしまい困惑するワ―ニャ。かつては教授であるセレブリャコーフのことを尊敬して、妹の嫁ぎ先にせっせと仕送りまでしていたというのに、感謝されるどころかすっかり愚痴っぽくなって見下してくるセレブリャコーフにイライラを募らせていく。ワ―ニャはエレーナに恋心を抱いていて、事あるごとにアプローチしているがエレーナの態度はつれない。

 

さらに、セレブリャコーフの主治医であるアーストロフが出入りするようになり、インテリで西洋かぶれの彼はワ―ニャの暮らしぶりに上から目線でケチをつけはじめる。母親や姪っ子のソーニャ、エレーナまでもがアーストロフに感化されるようになり、ワ―ニャに対する風当たりはますます強くなっていく。こうして鬱屈が溜まったところへ、セレブリャコーフが領地売却を持ちかけたことが引き金となり、ワ―ニャはついに激昂し銃を乱射させてしまう。

 

***

 

銃を乱射したのはいただけないが、実直に昔ながらの暮らしを守ってきたところに、都会風や西洋思想を持ち込まれてやいのやいのディスられてるワ―ニャ伯父さんの気持ちもわからなくはない。西洋思想の圧迫に鬱積がたまって暴発した今のロシアに、ワ―ニャ伯父さんと重ねてしまうのは私だけではないだろう。

 

今ロシアがワ―ニャ伯父さん的立場で「銃を乱射した、けしからん」となっているわけだけど、額面通りではなくもう少し多角的な視野で踏み込んで、なぜ銃を乱射したに至ったのかを丁寧に紐解くことが求められているように思う。

 

「ワ―ニャ伯父さん」は、こちらから無料で読むことができるので興味のある方はぜひ。

 

 

 

※この記事について

ウクライナやロシア関連の芸術文化に触れてみることで、両国のことをより深く知っていけたらという趣旨で書いています。 ウクライナまたはロシアのどちらかを肩入れするものではないし、国際情勢に対する個人的な見解を示すものでもないことをご理解ください。